骨軟部腫瘍クリニック

骨軟部腫瘍クリニックで行う治療


1 手術療法

 良性軟部腫瘍には辺縁切除(腫瘍被膜で切除)、良性骨腫瘍には病巣掻爬+人工骨移植を中心に施行しています。

 悪性腫瘍には広範切除を行います。一般的に肉腫は薄い被膜を有し周りの組織を押しのけるように大きくなります(いわゆる浸潤といって周りの組織に食い込むような傾向に乏しいのが特徴です)。腫瘍に接するように存在する重要な血管や神経はなるべく切除せず、無水エタノールという薬品での処置を追加し温存をはかります。骨悪性腫瘍の場合には関節を含む骨を大きく切除するため、切除だけでなくその再建を要することが多いです。腫瘍用人工関節による再建(図1)が一般的ですが、罹患骨処理骨(#4)による再建や、術中ナビゲーションシステムを利用してなるべく切除する骨の範囲を少なくするための工夫も取り入れています(図3)。




図3
 術中ナビゲーションシステムを利用してなるべく切除する範囲を小さくしています。そのうえで残った骨を体外で液体窒素処理し、元の位置に戻して固定することで、膝関節を再建しています。


(#4)罹患骨は腫瘍細胞を含むため、通常は体内に戻して再建に用いられることはありません。しかし、罹患骨より腫瘍の部分を取り除き、さらに①液体窒素処理 ②温熱処理 ③放射線照射のいずれかで処理し、残存する腫瘍細胞を死滅させた処理骨は、再度体内に戻して固定することで用いることができます。この、処理骨により失われた骨を再建する治療が2020年4月より保険診療として認められました。腫瘍用人工関節よりも良好な機能再建や、そもそも人工関節などが無い部位の機能再建に有効と考えられています。



2 化学療法、放射線治療

 
初期治療として手術の前後に行う補助化学療法を積極的に施行しています。代表例として骨肉腫に対するMAP療法、ユーイング肉腫に対するVDC/IE交代療法、さらには一部の軟部肉腫に対するAI(アドリアシン+イホマイド)療法が挙げられます。
再発した場合や、進行が認められる時期の治療においてはQOL(生活の質)を保つことを重視した化学療法を実施しています。ADR(アドリアシン)療法、ERI(エリブリン)療法は外来に通って点滴をすることも可能で、治療中ずっと入院する必要はありません。入院を要するTBT(トラベクテジン)療法においてもなるべく入院が短期間で済むように考慮しています。さらに、当院がんゲノム診断科と連携し肉腫のゲノム(遺伝子)を詳しく調べることで新たな治療可能性薬剤の探究も進めています。

 また、再発予防、症状緩和を目的とした放射線治療、手術困難例には重粒子線治療(神奈川県立がんセンター;i-ROCK)を紹介しています。

当クリニックが中心となり、患者さんの病状や希望に合わせて手術療法、化学療法、放射線治療を組み合わせることで、最適な治療を提案しています。


3 疼痛コントロール(緩和医療)

 がんの治療は、腫瘍そのものの治癒を目的とした治療と腫瘍や治療に伴って起こる症状(特に痛み)の治療が両立しなければなりません。我々腫瘍クリニックでは治療開始時点から積極的に、痛みなどの症状をコントロールするための治療を行っています。医療用麻薬(オピオイド)は痛みのコントロールにおいて重要な薬剤であり、適切に使用することで患者さんのQOL(生活の質)の改善、維持を図ることができます。QOL(生活の質)を保ちながら治療を行うことは、がん治療における大切な目標です。化学療法に使うものだけでなく、医療用麻薬を含む症状コントロールに用いる薬剤も、馴染みのないものが多く不安になられるかたもいらっしゃると思いますので、説明も十分に行なっています。

 また近年、人生会議という言葉に代表されるACP (advanced care planning :人生の終末期における意志決定プロセス)の重要性がうたわれています。あらかじめ大切な方と自分の病状進行期にどのような医療、ケアを希望するかその考え方、価値観を話し合う、共有することを指しています。腫瘍クリニックでは、主治医グループに看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーを加えた多職種で患者さん、大切な方との話し合いを重ねた上で治療方針の決定、緩和医療の際の療養の場の選定などをすすめていきます。

 
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